狗谷ミヤは春になれば三年生へと進級する。今は卒業式の準備やら何やらで二年生はやたらと忙しい時期であり、ミヤもまた何故かなってしまった委員会の仕事で走り回っていた。学校内には折り紙の輪っかで作った飾りがつけられ、卒業おめでとう!と書かれた画用紙製の飾りもぶらさがっている。
こうした掲示物や学校新聞を発行するのがミヤの所属している広報委員会の仕事であり、卒業する三年生のために記念となる学校新聞を作るのが、次の委員長に指名されてしまったミヤの仕事だ。
現在の広報委員長は独特な人物で、ミヤの周りで不思議なことが起こるならなおのことミヤを委員長にしたいと言い出したのだ。なんでも面白い記事がかけると思っているらしい。
「デジ一はちょっと嬉しい。できればキャノンが欲しかったけど」
卒業新聞のために、デジタル一眼レフを持って学校内の写真を撮影していく。三年生が使っている昇降口、部員数の多かった陸上部の部室付近、三年生の教室。職員室前にある大きな額縁に入った絵は、美術部員が地方大会で優勝した作品だそうだ。
次は四階の音楽室へ行ってこようと階段を登っていると、ふと重心が後ろに傾いた。
「…っ!」
近くに人間の気配があることには気づいていたが、それでも今は放課後だ。部活をしている人間が居てもおかしくないと思っていたために、どうやら認識が遅れたらしい。足払いされた勢いのまま、ミヤは背中から落下した。
【 仮想百鬼夜行 犬神奇譚 06 】
剣と珊瑚が卒業式まで今日を入れてあと3日という日に登校していくと、教室がいつもよりザワツイていた。何か面白いことでもあったのかと思ったが、そうではなく皆一様に暗い顔をしている。
剣はうわさ話の事情に詳しいであろう女子に話を聞こうと、クラスメイトの天宮カヨを呼び止めた。
「天宮、今日なんかあったのか?」
呼び止められたカヨは驚いた顔を見せたが、それでも相手が剣と珊瑚だと分かると安心したように微笑んだ。
「あのね、1こ年下の狗谷さんって居るでしょ?」
「あぁ、狗谷ミヤな」
「あの子、階段から突き落とされて入院してるんだって」
カヨはヒソヒソ話をするようにささやくと、とんでも無いことする人が居るもんだねー!とわざとらしく震えてみせた。
剣は酷いことを思っていると自覚しながらも、一瞬考えてしまった。虐めの末に入院させられるようなことになれば、狗谷ミヤは報復を考えるのではないだろうか。特にミヤにはその能力がある。
妖かしたちを使って何かしでかしはしないだろうか、もしくはもう何かあった後なのだろうか。
「それで、その狗谷さんがどうしたの?それだけで皆そんな顔してるの?」
「戒愁くん、それは甘いな。実は、狗谷さんが病院送りになったのが昨夜なんだけど、その後…学校で色々起きてるんだよ…広報委員長が自分でカメラ持って走り回るレベルで!」
「おい、何があったんだ!」
剣が思わずカヨの両肩を掴んで問いただすと、彼女は怒る風でもなく真剣に言ってみせた。
「まず、突き落とした犯人であろう生徒が居る二年四組の教室が、嵐でも来たみたいにグチャグチャになってた。あとは二年生の廊下が水浸しになってて、二年生の昇降口は人が入り込めないくらいに壊れてるらしいよ」
「え?でも朝はそんな騒ぎには…」
「三年とは昇降口が東西で逆じゃない。二年生は校舎も違うから大丈夫だとは思うけど、狗谷さんの呪いがこっちにもくるんじゃないかって噂なの」
剣は腹の底からどす黒いものがうずを巻いて沸き上がってくるのを感じた。もちろん、同級生を階段から突き落とすのはどうかと思う。しかし学校を壊して回って良いはずがない。階段から落ちた程度なら打撲で済むだろうが、教室や昇降口が半壊するようなことをするなんて命に関わる問題だ。
祓い屋衆と呼ばれる人たちのように、人間のために妖かしと一緒に働く人が居るというのに、狗谷ミヤは勝手すぎる。
「大丈夫だよ、梔子。今警察が来て調べてるって先生が言ってたし」
「そうか…警察が来てるのか……」
調べるのはここじゃない。病院に行って狗谷ミヤを問い詰めるべきだ。
剣はそう思い立つと教室を飛び出した。自分が何度も妖かし絡みの危ない目にあっているからこそ、他人がそれに巻き込まれることは許せそうにない。
「ちょっと梔子!どこ行くの!」
後ろから珊瑚とカヨが呼び止める声が聞こえたが、剣は無視して職員室へ向かうべく階段を駆け下りた。
もつれそうになる足でバタバタと階段を降りて行き、廊下へ出たところで誰かと衝突した。教室へ向かう職員だろうか。
「す、すみません!」
「あれ?剣くん?」
聞いたことのある声に顔をあげると、そこにはスーツ姿の清白千草と、同じくスーツを着た麗奈が居た。麗奈は以前剣が犬神に取り憑かれた時と同じように、長い髪の毛を低い位置で結んでいる。
はじめて千草のスーツ姿を見たので、一瞬剣は彼が千草であると認識できなかったが、麗奈ににっこりと微笑まれてはっと我に返った。
「廊下は走ったら駄目だろう?」
「すみません…ちょっと急いで……そうだ!千草さんなら分かりますよね!」
驚く千草に構わず寄っていくと、千草は困ったように微笑んだ。
「もしかして、狗谷ミヤさんのことを言いたいのかい?だったら大丈夫だよ、オレたちは警察の協力要請で祓い屋衆から派遣されてきたんだ。」
「良かった、じゃぁ狗谷はもう監視されているんですよね?」
「それはまだだよ。もちろん、オレの式が見張ろうとしているけれど、彼女の周囲に居る妖かしたちが自主的に排除しているようなんだ」
「じゃあ、あいつは今も野放しなんですか!!」
千草の背後で麗奈が眉間にシワをよせたのが見えた。どうやらお気に召さないらしい。しかし剣はそれも無視して言い募った。
「あいつが虐められたし返しに校舎壊してるんですよ!絶対そうです!今度はけが人が出るかもしれない!妖かしのせいで誰かが怪我するなんて駄目ですよね!!」
「剣くん。少し、落ち着こうか。」
「落ち着いてます!」
「じゃあ聞くよ、今回の校舎を壊した犯人は本当に狗谷ミヤだと言い切れるのかい?」
「それ以外に誰が居るんですか?」
「さっきも言っただろう、狗谷ミヤの指示がなくても動く妖かしが居るんだ。彼女を慕う妖かしは多い。特に犬神の類…つまりイヌ科の動物が妖怪となった者たちだね。四国の形部狸たちも狗谷に従うと言われているくらいだ。」
剣は千草のスーツにシワがよるのも気にせずぎゅっと握りしめた。どうして彼女を慕うのだろう。あんな人間離れした存在の、何が良くて妖かしは狗谷ミヤに付き従うのだろう。まして彼女の指示がなくても、周囲から害と思われるものを取り除くくらいに心酔してしまうのだろう。
「剣さん、我々妖かしは、何よりも自由を愛する生き物です」
今まで黙って見ているだけだった麗奈の言葉に、剣は手の力をゆるめて視線をなげた。
「しかし、自分よりも強い相手には従うこともするのですよ。強い者の下に居るほうが、自由な振る舞いが出来ますし。何より、狗谷ミヤという存在は古くから我々妖かしの中では有名です。」
「有名?」
「ええ。狗谷という家は妖術師として名高く、人間を快く思っていない連中に好かれています。更に狗谷ミヤという個人については、歴史を裏で操っていたとも言われる大妖怪、常磐が取り憑いたことで有名になりました」
麗奈の口から聞かされたのは、日本がまだ地方領主どうしで争っていたような平安と呼ばれる時代の話であった。常磐は狗谷の家が幕府の味方をしていたことから、幕府に逆らう者を裏で始末するような仕事をしていたというのだ。
「ですから、証拠も無しに狗谷ミヤを悪く言うのは、あなたの危害が及ぶかもしれません。やめておいたほうが利口ですよ」
「麗奈、止める必要はないよ。納得できないのなら着いてくれば良い。先生にはオレが誤魔化すから。」
「ですが…」
「狗谷さんのこと気に入っているんだろう?だったら剣くんにも彼女のことを分かってもらいたいじゃないか」
剣は、二人のやりとりに妙に苛立った。子供扱いされているような気がしたし、何より危機感が無いのだ。狗谷ミヤがどれほど恐ろしいことをやってのけるか、千草たちは考えたことがないに違いない。あの白い霧の世界を作り出した腐れ神の時だって、恐ろしい妖かしを自分の祖父にどうにかさせると言っていた。
身内にすらそんな扱いをするような人間が、他人にどんな仕打ちをするだろう。考えただけでもおぞましい。
そう思うとじっとしていられなくなって、剣は千草がまだ何か言おうとしているのも無視して、ここまで来た時と同じくらいの早さで教室へと駆け戻った。背後から呼び止める千草の声が聞こえたが、知ったことではない。
息を切らせて教室へ戻ると、臨時の職員会議があるからと一時間目は自習になったのだと黒板に書かれている。
「梔子!どこ行ってたの?」
教室の入り口で息を整える剣に、珊瑚とカヨは自習のプリントを放り出すと、教室が決して静かではないのを良いことに剣に駆け寄ってきた。
「警察とかが来てるんだけど…あーもう!説明するからこっち来い!」
「ちょっと剣!服が伸びちゃうよ!」
剣は自分たちの教室のすぐとなりにある空き教室へ入り込むと、念の為にと鍵をしめた。
「いいか、よく聞いてくれ。狗谷ミヤは、人間じゃないんだ」
◇ ◇ ◇
千草は式たちに集めさせた霊力の痕跡を見比べながら、深くため息をついた。どうやらこの校舎破壊の犯人は複数居るらしい。壊されたという二年生の教室には大きな爪あとのようなものが残っているし、水は水道水ではなく床から湧きでたようにこぼれている。正確には、今もまだ床からすこしずつ湧き出してきているようだ。
それらを見ながら、千草はこの土地に伝わる伝承について考えた。
「主、この辺りを歩いていた妖かしに話を聞けました。どうやらここは、昔から土鬼の領土だった場所。学校を建設されたことが気に食わないのか、河童たちを率いて、ここ最近は校舎を荒らして回っていたようです」
「なるほど。その中でも大きなイタズラと狗谷ミヤの怪我が重なったからこうなっちゃったのか。」
妖かしに聞いた話をメモしていたらしい手帳を見ながら、麗奈はつらつらと述べた。手帳を抱え直すと、次の指示を待ってこちらを見ている。
千草は彼女の従順さに心地よさを覚えながらも、どうしたものかとまたため息をついた。
土鬼は、仮にも鬼と呼ばれる妖かしだ。それなりに力も強く、この土地を守っていたとなれば、その中でも力がある者なのだろう。そんな相手に戦いを挑みたくはないし、かといって話が通じるかと言われれば分からない。
妖かしは自由を愛すると同時に誇り高い者が多い。自分の守護する土地を奪われたからと事件を起こしているのなら、話し合いに応じてくれるかどうかも危うい。
「困ったな、一度その土鬼と話をしたいんだが…」
「土地神に口を効けるほどの存在ですか…とすると、神主や住職、はたまた常磐のような力を持った者であれば確実ですね」
「麗奈じゃ無理かな?」
「生憎と私はここ数百年の間祓い屋と行動を共にしています。人間側についていることが知れ渡っていますので」
「となると…まずは校長先生にお願いしてみるしかないか。土鬼に相応の供物を与えてイタズラは辞めてもらおう」
「承知しました」
千草が荒れた教室を出ると、廊下はまたしても水浸しになっていた。誰が片付けると思ってるんだ、と愚痴を零しながら、千草は祭壇を作って供物を捧げる許可をとるべく校長室へと向かった。
こんなことなら、水を扱うことに長けている妖かしを式として連れてくればよかったかもしれない。
「片付けが面倒だ…」
「あら、得意ではありませんか、片付け」
「捨てるのは得意だよ、でも整理整頓は好きじゃないからなぁ」
千草と麗奈が廊下の水を避けながら歩いていくと、ちょうど階段を階下から登ってくる人物と出くわした。初老というにはまだ若いというくらいの男性で、その見覚えのある顔に千草は眉間にしわを寄せてしまうのを隠しきれなかった。
男性は優雅に会釈してみせると、丁寧な礼をする麗奈には視線を一切向けずに言い放った。
「清白の坊やがここの担当になるとはね、副校長として屈辱だよ」
「お久しぶりです、梔子重蔵さん。奥様はお元気ですか?最近はなかなかご挨拶にも伺えず、申し訳ございません」
慇懃無礼ともとれるように言えば、梔子重蔵は眉間にシワを寄せてみせた。ただ、それも千草の反応を見るための演出なのだろう。そうは分かっていても苛立つのは致し方ないというものだ。
重蔵はこの学校の副校長であり、妻は県の役員。なんとも豪勢な組み合わせで有名な夫婦であり、かつ祓い屋衆への出資も大量に行っていることで千草もよく知っていた。
「いやはや、今回の件も妖かし絡みなのだろう?嫌だねぇ、こうして妖かしが街をのさばっているというのは。」
重蔵はわざとらしく周囲に居る妖かしをチラチラと探すように視線を動かした。彼に妖かしを見る能力は無いのだろう、見えていたとしたらこの廊下だけでも大量の妖かしが行き来している様子に耐えられるはずもない。
「人間の世界を侵食している連中を、さっさと片付けてくれないか」
「えぇ、そのために、今から校長に許可をいただきに行こうと思っていたところですよ。」
千草がそう言い放つと、重蔵は忌々しげに顔をしかめてみせた。仕事が出来ない祓い屋は怒鳴りつけるし、逆に仕事が出来ても気に食わないらしい。妖かしに関わるものは皆全て、汚らわしいと思っているに違いない。だからこそ、麗奈が何をしようとも気にも留めずに、ただ千草にだけ声をかけるのだ。
孫まで居るような年齢になって大人げないと思うこともあるが、確かに目に見えない何かに襲われる恐怖に気づいてしまえば、こう卑屈にもなるだろう。麗奈もそれはわかっているのか、不機嫌そうではあるものの重蔵に一泡吹かせようとは思っていないらしい。
「ふん、せいぜいやってみたら良いさ。若造がどこまでやれるのか、見ものだよ」
「えぇ、お任せ下さい」
「ところで、この校舎を壊した連中は…あー、あれかね?猫の妖かしだったりするのか?」
「いえ…鬼と犬神の仕業と思われます。」
「そうか…ならば校長にお話しても問題あるまい。」
重蔵はそれだけ言うと、意味ありげに微笑んで見せてからどこかへと立ち去ってしまった。おおよそ、千草で遊ぶためだけに来たのだろう。面倒な人が権力を持っているものだと、千草は深くため息をついた。
「ため息をつくと幸せが逃げると言いますよ」
「もう逃げるような幸せも無いと思うよ」
その発言に、今度は麗奈がため息をついたことに気づかぬまま、千草は校長室へと向かうのだった。
◇ ◇ ◇
「狗谷ミヤが人間じゃないって、どういうこと?」
珊瑚のごもっともな問いかけに、剣はイライラしながら下唇を噛み締めた。正直に話したところで信じてもらえるとは思えない。何より、妖かしを見たこともないだろう彼らを、自分が体験したあの恐ろしい世界へ巻き込むのは気が引ける。
けれどこれもあの狗谷ミヤからの攻撃に対処するためなのだ、と剣は自分に言い聞かせて口を開いた。
「あいつは犬神憑きなんだ。」
「…妖怪ってこと?狗谷ミヤは妖怪なの?」
「狗谷さんが妖怪って…でも、犬神憑きってご先祖様が犬神使いだったからってことだろう?本人は関係ないんじゃ…」
「狗谷ミヤも、使うんだよ。怪しい魔法みたいなのを…妖術って言ってた。おれさ、妖かしに襲われたことがあって、その時に助けてもらったんだよ、祓い屋って人に」
「祓い屋ってエクソシストってこと?じゃぁ人間の味方だね、その人は」
「その祓い屋が今学校に調査しに来てて、言ってたんだ。狗谷ミヤの周りに居る妖かしが校舎を壊してるんだろうって」
剣がぎゅっと拳を作って言うと、それ以上に隣に居たカヨが反応を示した。息を呑んだかと思うと、まるで小さい子供が食べられない野菜を見た時のような、もしくは麗奈が常磐と出くわした時のような顔をしてみせた。忌々しいと言いたげな顔に、剣も珊瑚も目を見開くほどの表情で、カヨは制服のポケットから紙切れを取り出した。
紙はA4ほどの大きさで、横長にして置いた時、上部中央に鳥居のマークが。その下にはひらがなの五十音表と数字がずらりと書いてある。これは剣も知っていた。こっくりさんだ。
「人間じゃない奴なんて滅びるべきだよ。」
言ってのけた勢いで、カヨは10円玉を鳥居のマークに置いた。ほら早く!と言いたげに剣と珊瑚を見るものだから、剣はついつい10円に指を載せてしまった。珊瑚はそのことを信じられないという顔でこちらを見てきたが、カヨに睨まれると諦めたのか指を載せた。
「人間じゃないものでもね、こっくりさんは神様なの。だから大丈夫。でも妖怪は駄目。」
「コックリさんって神様なの?」
「そう。神様なの。迷った時に色々教えてくれる。今日は3人居るからきっといつも以上に色々教えてくれるはず」
カヨが10円玉に指を載せたまま目を閉じると、うっすらと体が光ったように見えた。剣はそれが、千草が妖術を使った時と同じだと気づくと、このコックリさんが妙に信ぴょう性のあるものに思えた。
「コックリさん、コックリさん。おいでください」
カヨがそう言った途端、光は一瞬強くなり、10円玉が微かに動いた。
「おい小娘、その紙の書き方間違ってるだろう」
聞いたことのある声に顔をあげると、そこには白髪に緑色の瞳、着流し姿に耳がぴょこっと見えている、剣が見慣れた妖かしの姿が浮いていた。。不機嫌なのか、彼の尻尾はビシビシと壁を叩いている。
「げ、常磐!!!」
「『げ』とはなんだ、犬。」
「犬じゃねぇよ!犬はお前だろう!」
「犬ではない。狼だ。いや、今は狗神代理だな。」
うっかり10円玉から指を離しそうになりながら、剣は盛大に吠えた。両隣の珊瑚やカヨにも常磐の姿は見えているようで、二人とも目を見開いて常磐を見ていた。次第にカヨは嬉しそうな表情になり、それから用紙を見てしょんぼりと眉を下げた。
紙の内容が間違っていると言われたのがショックだったのだろうが、剣からしてみれば常磐の言葉に耳を貸す必要など全くない。
「で、何が知りたいんだ、小娘よ」
常磐が側に居ない方が狗谷ミヤは悪さが出来ないのだろうかとか、側に居ないことで拗ねて何かしでかさないかだとか。そういったことが頭の中でぐるぐると回って整理できない。
ニンマリと笑ってみせた常磐に、剣は一抹の不安を感じながらもカヨの言葉を待つしか無かった。
2015/03/05 今昔
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